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NMNは卵子の質、数、受精能力を向上させることが学術論文で報告された

ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)は、老化に伴い体内から低下する抗老化酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD +)を生成するとされています。

体内のNAD+量を増やすと老化を防ぐことができると往年の研究から判明しており、そのためNMNは”若返り薬”として注目されています。

参考記事:NMNサプリの若返り効果って?科学的な見地から分り易く解説

目次

マウス実験の結果、NMNによって高齢母体の生殖能力の大きな改善が確認された

そんなNMNですが、2020年8月になんと高齢マウスの生殖能力を大きく改善する効果が確認できたという論文が発表されました。

発表されたのは、Cell Reports(セル・リポーツ)という生命科学の論文をまとめた、業界のプロフェッショナルが購読する研究雑誌。
引用:Nicotinamide Mononucleotide Supplementation Reverses the Declining Quality of Maternally Aged Oocytes

 

高齢の母体であるマウスにNMNを摂取させたところ、摂取していない母体と比べ排卵が増加し、さらに受精する割合も向上したというのです。

ほとんどの哺乳類は、加齢に伴って卵胞の量と質が低下し、生殖能力がが衰えていきます。

現在も、加齢に伴う生殖能力の衰えを食い止める有効な手段は確立されていません。

 

しかし、2019年に中国の研究チームが、体内のNAD+量を増やすことで高齢のマウスの卵子の質を向上させることに成功しました。
引用:NMNAT2-mediated NAD + generation is essential for quality control of aged oocytes

この研究を受けて、NMNの摂取により高齢母体のマウスの生殖能力が向上するか実験したのがCell Reportsで発表された論文です。

 

生殖能力の改善が見られたマウス実験の結果を解説

 

こちらは、若いマウス、高齢のマウス、NMNを与えた高齢のマウスで、卵母細胞(受精前の卵子の基になる細胞)の排卵(卵子の成長)と細胞死の割合を調べた結果です。

NMN供給による、高齢母体における卵母細胞の品質改善効果
(A)マウスから収集された、成熟した卵母細胞の代表的な画像。
若齢、老齢、およびNMNを与えた老齢マウスにおける  (B)排卵した卵母細胞の数 および  (C)細胞死した卵母細胞の割合。

引用:nmn.com ”NMN Increases Oocyte Quality, Number, and Fertilization Ability”

 

(A)の写真では、NMNを与えなかった高齢のマウス(真ん中)だと細胞死した卵母細胞が目立ちます。

(B)を見ると、NMNを与えなかった高齢のマウス(真ん中)では排卵した卵母細胞の数が非常に少なくなっています。
また(C)では、NMNを与えなかった高齢のマウス(真ん中)の場合全体の40%近くが細胞死した卵母細胞であることが分かります。

一方でNMNを与えた高齢のマウス(右)だと、(A)から細胞死した卵母細胞が目立たなくなっています。
(B) から卵母細胞の数は倍近くに増えており、(C)では壊れた卵母細胞の割合は非常に小さくなっていることが分かりました。

この実験から、マウスにNMNを与えると卵母細胞が成長して卵子になる割合が増加し、卵母細胞の細胞死が減少することが分かりました。

 

 

また、NMNを与えることで卵母細胞の受精率の向上も確認されました。

こちらも同じく、若いマウス、高齢のマウス、NMNを与えた高齢のマウスで、今度は受精率と、受精後の卵子が成長して胚盤胞になる割合を調べた結果です。

老化した卵母細胞の受精能力と胚発生に対するNMN補給の効果。
(D)マウスから採取された、胚発生初期の代表的な画像。上:2細胞期の胚。下:胚盤胞(細胞分裂の進んだ胚の次段階)
(E)受精率 (F)胚盤胞の形成率

(D)は左からNMNを与えた高齢のマウス、高齢のマウス、若いマウスの胚発生初期(受精して胚になる卵母細胞)の写真です。
NMNを与えた高齢のマウスは細胞死した卵母細胞が目立ちますが、NMNを与えた個体だと2細胞期の胚(受精して始めの細胞分裂を始めた段階)が多く確認できます。
その後、細胞分裂がちゃんと進み胚盤胞が多く形成されています。

(E)を見ると、受精率は高齢のマウス(真ん中)だと約20%ですが、NMNを与えた高齢マウス(右)だと倍近い約40%まで改善しています。

(F) からは、NMNを与えた老齢のマウス(右)だと、胚盤胞まで成長する卵子の割合がNMNを与えなかった老齢マウス(真ん中)と比べて1.5倍近く増加していることも確認できます。

 

 

マウス実験の結果、NMNによって高齢母体の生殖能力の大きな改善が確認された

 

NMNによって生殖能力が改善した理由。
それはNMNによってミトコンドリアが活性化したからだと思われます。

 

ミトコンドリアは細胞の原動力となる物質であり、卵子はあらゆる細胞の中でも特に多くのミトコンドリアを保有しています。

年を取るとミトコンドリアの機能が低下し、細胞の再生が滞って「老化」が起きます。
卵子も同じく「細胞死」の割合が大きくなってしまいます。

NMNによって生成されるNAD+がミトコンドリアを活性化することは多くの研究で示唆されています。

今回の報告を行った研究チームも、ミトコンドリアの活性化によって卵子の老化が抑制されれたことが、生殖能力向上の理由であると結論づけました。

人間においても、同様の効果が期待できるかもしれません。

現時点で高齢の女性の生殖能力を改善する有効な手段はありませんが、NMNによってこの問題が解決するかもしれません。

そうなれば、NMNは生殖医療に大きな貢献を果たすことになるでしょう。

 

まとめ

高齢のマウスにNMNを与えると、与えなかった高齢のマウスに比べて

卵母細胞の成長促進、受精率の向上が確認された。

人間においても、高齢女性の生殖能力の改善にNMNが効果的である可能性がある。

 

 

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